市立市川自然博物館 2002年8月1日発行

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 くすのきのあるバス通りから  むかしの市川  わたしの観察ノート





特 集  市川北高校付近



自然のある場所V『市川北高校付近』

   市川北高校の裏手に、まとまった面積の田んぼや休耕田、アシ原が残っています。
  いずれも農家の方や土地の所有者の方、地域の方のご努力で現在に至っている場所ですが、いまなお稲田の風景が見られる市内でも数少ない場所のひとつです。
  そして風景だけにとどまらず、多様な湿地環境が残る自然の空間としても貴重な所です。

    

枝 谷 と 幹 谷 の 合 流 点

   木の幹のような太い谷と、そこから分岐する枝のような谷−この組合せが市北部の環境の土台を成しています。
  今回取り上げた市川北高校付近は、ちょうど長田谷津と殿台の谷津という2本の枝谷が、大柏谷という幹谷に合流した場所に位置しています。
  その結果、2本の枝谷、特に長田谷津から湧水に由来する水が大量に供給され(当然、魚や貝なども)、一方で場所自体は幹谷にあるので、枝谷(谷津)のように斜面林にはさまれることなく開放的で、豊かな水を擁した広がりのある湿地環境が形づくられています。
 かつて市内の2つの幹谷(大柏谷と国分谷)には何本もの枝谷から生きた湧水が流れ込み、ほぼ全域にわたって田んぼが広がっていました。もちろん、その当時の景観とは比ぶべくもないのですが、それでも付近には北高校の校舎以外には高い建物もなく、田んぼやアシ原が広がる様子は、かつての風景を彷彿とさせるものがあります。

左図は、市川北高校周辺の航空写真。上方から長田谷津、左方から殿台の谷津の水がやってくる。 
右図は、台地の範囲、大柏川、主要な道路などを示したもの。

 


田んぼや低い湿地に特有の植物

   湿地の植物は、「遷移」と呼ばれる流れに従い、つぎのように移り変わります。

  (1).水面の多い浅い湿地
     ↓
  (2).背の低い植物が群生する湿地
     ↓
  (3).背の高い植物が群生する湿地
     ↓
  (4).アシ原

  このうち、(1)が田んぼ、(2)が休んでまもない休耕田に相当し、(2)の休耕田はそのまま放置されると(3)(4)と移行し、市川あたりでは最終的に(4)のアシ原に落ちつきます。
  生育する植物の種類は各段階で異なり、特に(1)(2)の段階で見られる植物は、(3)(4)の段階へ移行することで姿を消してしまうことが多くあります。大型の植物との競争に負けてしまうからです。
   市川北高校付近では、(1)(2)の段階でしか見られない植物がいくつも生育しています。
  サジオモダカやコナギ、イボクサ、コブナグサ、アシカキ、アカバナ、キクモ、ムラサキサギゴケ、スズメノトウガラシ、タビラコ、ミズワラビ、イチョウウキゴケなどです。
  これらは、市内でも見られる場所が限られた植物です。
(「市川の自然の記録 第3号」参照。2001年 市川自然博物館発行)

ミズワラビ タビラコ
キクモ ムラサキサギゴケ


北高裏の田んぼと大柏川

     田んぼや湿地の生態系が持つ重要な機能のひとつに「ゆりかご」の効果があります。水に依存する小さな生き物の、産卵〜成長の場となるのです。
  たとえば北高裏の小さな水路では、6月ごろ、小さなドジョウと小ブナがたくさん見られました。
   おそらくドジョウは田んぼで、小ブナはこの水路が水を引く大きな水路で生まれたものでしょう。
   春先にはシオカラトンボのやごが見られたり、またこの一帯はニホンアカガエルの繁殖地としても知られています。
 北高裏の田んぼは、水を通じて大柏川につながっています。そして「ゆりかご」というのは、大柏川にとってのという意味です。
  水を張った田んぼで見られる爆発的なミジンコの発生は、仮に水がきれいになっても大柏川では起こりません。 
  浅くて穏やかな水のたまりとしての田んぼだからこそです。将来、水質が回復するであろう大柏川に生き物を供給するのは、北高裏のような場所なのです。

 

 


管 理 し て こ そ

   北高裏には、田んぼ、湿地、アシ原と3つの環境が混在しています。
   これらにはそれぞれ、その環境を好む生き物がいて、野鳥を例に取ると、アシ原ではオオヨシキリやオオジュリンが暮らし、田んぼではタシギやタゲリが暮らします。
  カルガモが子育てをするのは田んぼでも、卵を生むには湿地やアシ原が必要です。
  ですが田んぼや湿地は、放置すればアシ原へと遷移します。そうなることで有利になる生物がいる一方で、姿を消す生物もいるわけです。
 地域の自然環境として、どういう姿が望ましいのか、答えは一つではありません。一面のアシ原という考えもあれば、一面の田んぼという考え方も可能です。そして現在の北高裏では、田んぼ、湿地、アシ原の混在です。
  この状態は、管理をしてこそ維持できます。田んぼを維持するためには農作業が、湿地を維持するためには草刈りが必要です。人手が入ってこそ守られる自然もあるのです。

田んぼの中を流れる小川 ボランティアによる稲刈りの様子。

 

 


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街かど自然探訪



             イセジュク              
      
伊勢宿・豊受神社



























   内匠掘沿いにある豊受神社には、大きなイロハモミジやエノキなどの木々があり、夏の日差しを避けて休憩しながら観察するのに最適の場所です。
 イロハモミジの紅葉は、山に行って遠くから見るのもきれいですが、木の下に入って、紅葉した葉を見上げ、日差ですかして見ると、とてもきれいに見えます。
 秋になってイロハモミジが紅葉したら、試して見て下さい。






 

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レッドデータブック掲載種紹介

 



イノカシラフラスコ 

 分 類: 車軸藻植物 シャジクモ科
  ランク: 絶滅危惧 T類

  車軸藻(しゃじくも)という、やや下等な植物のグループに属する水草です。
   名前のイノカシラは発見地である都内・井の頭にちなみ、フラスコモというのは雌性の生殖器をフラスコの形に見立てたもので、フラスコモ属という大きな群を形成しています。
 本種はじゅんさい池公園のうちの、ジュンサイの育成に取り組む市民団体が管理する池で見つかったもので、現在、保全のための調査検討が進められています。




 

 

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くすのきのあるバス通りから



No.26 今回観察は…

『学校で無事、羽化しました!』


 

 

 
  
小学校3年生の娘が学校で育てたいというので、街路樹のクスノキを見て歩きました。
 慣れたせいか、アオスジアゲハの幼虫はわりと見つかります。
 大きな幼虫を枝ごと持たせました。2日後に蛹になり、その12日後に羽化しました。
 街路樹でも蛹の殻を見つけました。
 7月には、また街路樹でアオスジアゲハが産卵していました。葉を見ると小さい幼虫がいました。結構いるんですね。

       (M .M .さん)

 

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むかしの市川


  このコーナーでは、博物館が1986年に行ったアンケート調査の結果から、むかしの市内の様子を紹介しています。(原則として回答の原文のまま)

  • 近くの真間川(昔は新川と呼んでいました)は昭和15年頃は水もきれいで良く泳ぎ、むぐりと云ってむぐって手で魚が取れました(フナやハヤブナ)。又、田んぼの水路ではナマズ、フナ、ドジョウ、メダカ取りをよくやりました。川の土堤で凧あげも出来ました。
    今の真間川の水質とまったくちがい、ほんとうにきれいでした。(中山)

  • 真間川にメダカ、どじょう、こいがい た。(下貝塚)
  • 家の近くに池や、小川がたくさん有り、メダカ、ドジョオ、フナ、コイ、が沢山とれた。タマ網、四ツ手網、でバケツ一杯魚が取れた。田んぼには、蛙や蛍などもたくさんおりました。又、一本松近くには鶴が舞いおりていました。
  • 池で泳ぎ、空地で野球も出来ました。(市川南)

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わたしの観察ノート No.57


◆大町公園より

  • ショウブの花が咲いていました(5/5)。

  • フクロウの巣箱が空になっていました(5/13)。 巣立ったヒナは見えませんでしたが警戒する母親が、少し離れたところにいました。

  • ネムノキの花が咲き始めました(6/23)。 緑一色の斜面林でピンク色の花がちらほら見えます。

     金子謙一(自然博物館)

  • ミドリシジミを見ました(6/2)。夕方に今年羽化した個体がハンノキの周辺をすごいスピードで飛んでいました。

    清野元之(自然博物館)

  • オニヤンマのヤゴが羽化をしていました(6/13)。
     

     宮橋美弥子(自然博物館)

  • カブトムシがクヌギの木に来ていました(6/15)。 樹液から甘酸っぱい匂いが周辺に広がっていました。

     小川 晃(自然博物館)

◆大町周辺より

  • コジュケイが「一寸来い、一寸来い」と鳴いていました(5/18)。 

    高畑道由さん(南大野在住) 

柏井町周辺より
  • ムラサキシキブの花が咲いていました(6/13)。 

    金子謙一

 

国府台江戸川周辺より
  • アオバズクを今年始めて観察しました(5/11)。 16年連続の記録です。
  • ササゴイを見ました(6/22)。 
里見公園より
  • メボソムシクイが大きな声でさえずっていました(5/12)。
  • アオバズクを見ました(6/16)。 ケヤキの枝にとまって寝ていました。
小塚山公園周辺より
  • ヤマガラの親鳥と巣立ったばかりと思われる幼鳥1羽を見ました(5/3)。


    以上 根本貴久さん(菅野在住)
高谷・原木周辺より 
  • ゴマダラチョウを見ました(5/19)。 
  • イワツバメが巣に出入りしていました(5/19)。

    以上 田中利彦さん(船橋市在住)

  5月に入り平年並みの気温の日が多くなり、季節の進み具合いも落ち着いてきました。
         梅雨入りは6月11日でした。


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