◆ 市川自然博物館だより ◆

2002年10・11月号(第82号)

自然のある場所W

柏井雑木林

市立市川自然博物館 2002年10月1日発行

 特集記事  街かど自然探訪  こんないきもの飼ってます
 くすのきのあるバス通りから  むかしの市川  わたしの観察ノート

 


 
特 集  柏井雑木林

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周辺地図


 

自然のある場所W『柏井雑木林』

   柏井町2丁目に、まとまった規模の雑木林が残っています。
  さらに、隣接する船橋市にも連続して林があり、また周辺には農地も多く、市川市と船橋市の市境一帯が大きな緑地帯のようになっています。
  民有地が多いのですが、市川市側についてはキャンプ場などが整備され、市の緑地として保全されている場所もあります。

    

ノ ウ サ ギ の い る 雑 木 林

   ノウサギの生息の有無は、雑木林などの緑地の現状を知るひとつの目安です。
   走ることと隠れることでしか身を守れないノウサギにとっては、緑地の面積が広いということが生存のための条件だからです。
    ノウサギは、雑木林や草原や農地のどこかに身を潜め、どこかで草を食べ、敵が近づくと走ってどこかに隠れます。また、草むらに直接子を生み、草で子を隠しながら育てます。いずれも、十分な広さの緑地でこそ可能な生活様式です。
  かつてノウサギは、市北部では幅広く見られました(「市川の自然の記録 第1号」)。現在は大町公園一帯で比較的よく観察されているほか、柏井雑木林でも2001年には糞を確認しています。ですが、柏井雑木林での観察例は10年あまり前にくらべると少なくなりました。
   それはちょうど、柏井雑木林一帯で、さまざまな環境の改変が起こりはじめた時期と一致しています。
  「まとまった規模」という柏井雑木林の特徴は、失われつつあるのかも知れません。

            林 の 様 子

           ノウサギの足跡

 

木 々 と 野 草 の 関 係

   雑木林の木々と、そこに生える野草の間には密接な関係があります。木々の下でしか子孫を残せない植物が、林の中には生えているのです。
 柏井雑木林で見られる雑木林特有の植物としては、つぎのようなものがあります。ヤマユリ、アマドコロ、キツネノカミソリ、ウラシマソウ、ヒトリシズカ、タチツボスミレ、イチヤクソウ、ハエドクソウ、ツリガネニンジン、ヒヨドリバナ、ニガナなどです。
 雑木林とは、落葉広葉樹でできている林です。夏には葉を繁らせ、冬は落葉します。このことが、そのまま雑木林に特有の環境を作りだしています。
 つまり、夏は強すぎる日差しを木々の葉が遮る一方で、林内の腐葉土に蓄えられた水分が植物の成長を促します。
 冬は林の隅々にまで差し込む日差しが太陽の熱をもたらし、また秋の大量の落ち葉が地面を覆って植物の種子や根を守ります。
 照りつける太陽、吹き抜ける北風……といった林外の環境にくらべると、林内の環境は、やわらかです。

ツリガネニンジン

 

ア カ シ ジ ミ

  雑木林の木々と関係が密接なのは野草だけではありません。林に暮らす多くの昆虫たちもまた、木々が繁る林でなければ子孫を残していくことができません。
 アカシジミは、モンシロチョウをやや小さくした位の大きさのシジミチョウです。雑木林の代表的な樹木であるコナラやクヌギと深く関わった暮らしをしていて、例えば産卵場所にはそれらの枝や幹を、幼虫の餌には新緑の頃のやわらかな葉を利用します。林の中で蛹になり、成虫が蜜を吸うのも雑木林に多いクリの花などです。林という環境、しかもコナラやクヌギがたくさん生えていることが、子孫を残していくために不可欠です。
 一般に雑木林が昆虫の宝庫と言われるのは、多くの木々がさまざまな形で昆虫の一生を支えているからです。柏井雑木林でも、朽木を割れば中にはさまざまな昆虫の幼虫が潜み、繁る葉を丹念に探すとチョウやガの幼虫、ナナフシなども見つかります。落ち葉をどければゴミムシなどが走りだし、林内で越冬するイトトンボまでいるのです。

アカシジミ

 

カトリヤンマの池

    キャンプ場の入り口近くに、池があります。炊事場などからの雑排水を受ける構造になった池ですが、キャンプ場の利用が少ない時期は、湧水や雨水を水源とするために、わりときれいな状態を保っています。それほど大きな池ではありませんが、ここは市川のような都市部では珍しいカトリヤンマというトンボの発生地になっています。
 カトリヤンマは、すこし変わった暮らしをしています。年中、水が溜まっているような池ではなく、冬には水が枯れている池を好みます。そういう池の泥の中に卵を産み、梅雨時になって池に水が入るといっせいに孵化して、一気に成長してトンボになるのです。羽化したトンボは林の奥で餌を取り、秋には再び池を訪れて産卵します。柏井雑木林の池は、台地上に位置して湧水の量が不安定であるため、うまい具合に水が枯れ、カトリヤンマに最適な環境になっています。
 しかし、最近は、年間を通じて水が入らないようになってしまいました。原因ははっきりしませんが、その結果、カトリヤンマはわずかしか見られなくなり、あわせてマルタンヤンマやヤブヤンマ、クロスジギンヤンマ、リスアカネといった林に囲まれた水辺を好む市内では珍しいトンボたちも姿を消してしまいました。最盛期には、池の周囲の木の幹に、まるでセミの脱け殻のようにカトリヤンマの羽化殻がついていたのですが、現在では望むべくもありません。ひと工夫、したいところです。

池の様子(水は枯れている)

 

2つの谷津を結ぶ林

   比較的平坦で、面としてのまとまりがあるというのが、柏井雑木林の特徴です。それは、市内に多い谷津の斜面林とは対照的です。ですが、じつは柏井雑木林もまた、谷津の斜面林なのです。
 表紙の鳥瞰図を見ていただくとわかるのですが、北側と南側の双方から入り込んだ谷のちょうど最奥部の部分(鳥瞰図では「市民キャンプ場」と表示)が柏井雑木林の位置するあたりになります。つまり、2つの谷の最奥部の林が合わさって、台地上に平坦な林とした残ったわけです。通常、谷津の斜面林というのは、本当に斜面の部分だけで、平坦な台地上は農地などに利用されています。それが2つの谷が近かったために、うまくひとつながりに残ったのかもしれません。
 ひと口に林といっても、形態や現状はさまざまです。ただ単に「緑」という言葉でひとくくりにしてしまわず、その違いに目を向けることも大切なことではないでしょうか。

 

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街かど自然探訪
 イチカワ
 市川・ハクビシン













    市内にハクビシンが住んでいるのを御存知ですか?
    市川1〜3丁目では昨年、3件も情報がありました。内容は屋根裏で糞が発見されたものが2件、台風の後幼獣が2匹保護されたものが1件です。
  ハクビシンは、ジャコウネコ科の哺乳類で、額から鼻にかけて太い白線があるのが特徴です。夜行性で警戒心が強く、木登りが得意なため、成獣を見つけることは難しいです。
  もし、見かけましたら自然博物館まで情報をお知らせ下さい。

 

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ヌマガメ科  ク サ ガ メ

  甲羅の長さが20p以上、体重は1`以上もある雌を2匹飼っています。
  銭亀の名で売られている可愛らし子ガメはクサガメのことで、こんなに大きくなるとは思わない方も多いでしょう。
  同じ水槽では喧嘩をするので、片方は屋外で飼い、冬眠もさせます。
  すると6月頃約一ヵ月ほとんど餌を食べなくなり、その後卵 (もちろん無精卵) を10個ぐらい産みます。室内で年中同じ水温で飼っている方は卵を産んだことはありません。

 

 

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  アオスジアゲハの幼虫、毎日のように探しているのに最近はなかなか見つかりません。
   やっと見つけた日、小3の娘も学校から帰ってきて「ただいま、アオスジアゲハの幼虫いたよ」ですって。
    二人が見た場所が違うので、早速見に行きました。私が見つけたのは小学校の近くで5_くらい。娘が見つけたのは、もう少し自宅寄りで、緑色の2aくらいでした。八幡近辺はクスノキが多いせいか、アオスジアゲハには行く先々で、毎日のように出会います。
  9月になって、キジバトが毎年営巣する我が家の藤棚にハトが来て、勝手知ったる様子で、すっと巣に座りました。その後、四男と娘が「母さん大変だ」と呼びに来ました。
   見るとガラス窓にきれいなハトの「押し絵」。ハトはその後、無事飛んでいったそうですが、窓には細かい羽の模様まで見える精密な絵のような跡が残りました。
       (M .M .さん)

 

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むかしの市川


  このコーナーでは、博物館が1986年に行ったアンケート調査の結果から、むかしの市内の様子を紹介しています。(原則として回答の原文のまま)
  • 江戸川の水はすんでいて水上生活者は飲んでいた。真間川は真間小学校周辺がフナの釣り場であった。真間小の前に耕地整理組合の池があり、真間川の水をせきとめて市川駅方面の南の水田に水を運び、フナが沢山泳いでいた。大門通りの石橋下でコイの子が群泳してよく釣れた。コウホネ、ヌマガヤツリ、ヒシ、セキショウモ、エビモ、クロモなど沢山生えていた。(市川)

  • 19才でお嫁に来、家は数軒しかなく、製紙工場がありました。農家ではすの収穫を行い、はす畑の回りに米をつくりました。 (大和田) 

  • 松、杉、けやき、なら、周囲 2.5m以上の木がはい茂ってまるで神社の森の様な風景でした。道路は村道、どろんこ道で荷馬車所々で立おじょう。水すましと言う魚までいました。 (大町) 

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わたしの観察ノート No.57


◆大町公園より

・セリの花が咲いていました(7/7)。

・ヤマユリが咲いていました(7/20)。 ちょうど7分咲きでした。

・タマムシがエノキにきていました(8/5)。

・オモダカの花が咲いていました(8/12)。 大町公園では、サジオモダカが目立っていたのですが今年はオモダカもよく咲いています。

  金子謙一(自然博物館)

・ニイニイゼミの鳴き声を聴きました (7/9)。 

・クサガメがあちらこちらで見られるようになりました(8/2)。産卵場所をさがしているようです。

  宮橋美弥子(自然博物館)

・ゴイシシジミを見ました(8/7)。 

・ヒメアカタテハを見ました(8/16)。 

  清野元之(自然博物館)

・ウマオイが鳴いていました(8/15)。 

   小川 晃(自然博物館)

◆大町周辺より

・コジュケイが「一寸来い、一寸来い」と鳴いていました(5/18)。 

  高畑道由さん(南大野在住) 

柏井町周辺より

・アケビの実がついていました(7/15)。 熟すのが楽しみです。

  金子謙一

堀之内貝塚周辺より

  ・ムラサキツバメを見ました(7/27)。 考古博物館の前のマテバシイにとまって  いました。

    鈴木弘行さん(船橋市在住) 

里見公園より

    ・アオバズクの幼鳥が2羽巣立ちました(8/7)。
      観察をはじめて最も遅い巣立ち  でした。
小塚山公園周辺より
     ・ツミを見ました(7/28)。 

    以上 根本貴久さん(菅野在住)
江戸川周辺より

         
・ミズカマキリを捕まえました(8/22)。ハイイロゲンゴロウもたくさんいました。

        金子謙一 
名前をしらべる会より

         ・8月31日の「名前をしらべる会」に持ってきてもらった標本の中に、大切な記録と
              なるものがありました。

    *クマゼミ羽化殻
               2002年8月25日、真間3丁目(桜土手公園)にて、
               川久保悠史さん採集

    *ナガサキアゲハ
               2002年8月31日、大町にて、
               関知美さん採集

 このうち、ナガサキアゲハは翅の傷みがまったくなく、迷蝶のような感じではありませんでした。いずれも、山崎秀雄先生と確認しました。

       金子謙一

7月20日に梅雨が明けました。その後猛暑が続き、雨も降りませんでした。

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