自然博物館だより 87号

市立市川自然博物館 2003年8月1日発行

今年度の特集は、『長田谷津総合調査』の内容を紹介していきます。
 
第3回目は『長田谷津の植物』についてです。

新コーナー『自然博物館のめ』が始まりました。
 
生き物をいろいろなかくどから見ていきます。
 今回の生き物は
『ナツアカネ』です。

     

 特集記事  街かど自然探訪  こんないきもの飼ってます
 くすのきのあるバス通りから  自然博物館のめ  わたしの観察ノート

 


長田谷津調査報告

特 集 
長田谷津の植物

 


 

長田谷津総合調査報告

長田谷津の植生が、湿地・斜面林・農地(台地上)の3つに区分されることを前回、紹介しました。
今回は、そのうちの湿地と斜面林について、植物の種類を調べた結果を報告します。
長田谷津の植物は、「自然のまま」とは言っても安定的なものではなく、長年の間にさまざまに変動してきています。

    

種  類  の  調  査

 調査は、1999年の1月から12月にかけ て、計48回行いました。
 種子植物とシダ 植物について、花や胞子が見られた種類 を記録し、開花を確認しにくい樹木につ いても、別途、調査を行いました 。
 
調査範囲は、図1のように 長田谷津の湿地と斜面林の部 分で、そのうち谷奥の盛土さ れた庭園風の場所と、バラ園 より下流側の一帯については 調査しませんでした。
 これら の場所は本来の湿地環境が損 なわれている上に、さまざま な植物が移植されているから です。
 そのため、例えば谷奥 の盛土上で見られるコスミレ (由来不明)や、セントウソ ウ、イヌヌマトラノオ、ホタ ルブクロ(3種とも移植され たもの)などはリストには挙 がりませんでした。
 また、調 査区域であっても、例えばリ ュウキンカのように移植後、自力で増加してきている種類などは記録 しましたが、ミズバショウのように植え たままの状態からあまり変化しないもの は外しました。
 また、1年だけの調査な ので、記録もれになった種類もいくつか ありました。

調査区域の図 

 図1 調査区域

 

種 類 の 盛 衰

 以前の植物については「大町自然公園地域における自然調査報告T」(市川自然環境調査グループ,1973)と「同U」(同,1974)にリストが示されています(以下、『報告書』と省略)。
 今回の調査で得られた結果に、日常の観察結果を加味したものを『現状』とし、『報告書 と『現状』を対比することで植物の種類の盛衰を洗い出してみました。特に大きく変わったのは、湿地の植物です。
 『報告書』には、アゼムシロ、キクモ、アカバナ、チョウジタデ、コナギアゼテンツキ、ヒデリコ、ウキガヤ、チゴザサ、オモダカなどが「多い」または 「普通」として記されていますが、『現状』ではすでにアゼムシロは見ることができず、キクモも数株程度しか見られま せん。
 他の種類もずいぶん減りました。また、草原性の種類も減少しました。 ノアザミやノハラアザミ、ウツボグサ、コマツナギ、クララ、キンポウゲなどの名前が『報告書』にはありますが,これらも今回の調査では、ノハラアザミとウツボグサしか見つかりませんでした。
 一方で、樹林に生えるハエドクソウやジャノヒゲ、ベニシダなどは『報告書』 では「稀」「少ない」となっていますが 『現状』では「普通」「多い」種類です長田谷津は、この25年で休耕田だった湿地がヨシ原へと遷移しました。斜面林でも樹木が育ち、また、低木やアズマネザサ、タケ類なども茂るようになりました。こういう環境の変化によって植物の種類が盛衰し、一方で、その盛衰によって環境も変化しているのです。

 

生育環境の属性による比較

 今回リストされた334種類について、その種類が本来的に生育する環境を「湿 地」「樹林」「里地(道端や空き地)」 の3つに半ば強引に色分けしてみました。
 その結果を示したのが、図2のグラフ です。これを見ると、「樹林」の種類が 多く、「湿地」と「里地」の種類は同じ くらいであることがわかります。
 「樹林」の種類が多いのは、ひとつには樹木が含まれているからですが、同時に、一見単調な斜面林であっても部分的にマツ林的な場所と草原的な場所があり、 アブラススキやノガリヤス、ヤクシソウ、ヤマハッカ、キバナアキギリ、クサボケなどの種類を維持していることが大きい と思われます。
 一方で「湿地」の種類は意外に少ない感じです。やはりこれは、湿地の広い範 囲がヨシ原などに遷移したことで、種類 の構成が単調になったためと思われます。 
 「里地」の種類は、里地の環境が少ない割には多いようです。長田谷津では、例えば湿地の中のやや高く土が堆積した場所(あぜのような場所)でも「里地」 の種類を見ることができます。

生育環境属性別の円グラフ

図2 生育環境属性別の種類数の割合

 

 

移 入 と 帰 化

 つぎに、「樹林」「湿地」「里地」のそれぞれの属性をもつ種類について「在 来」「帰化」「移入」の3つに区分して 種類数を比較してみました(図3)。
 このうち「帰化」と「移入」は区別が不明瞭な部分もありますが、いわゆる帰化植物で、かつ、意図されずに「勝手に」入り込んだと思われる種類については「帰 化」とし、「移入」の方は、在来植物、 帰化植物を問わず、意図的に長田谷津に 持ち込んだものを当てはめました。
 例え ば、キショウブは「帰化」でカキツバタは「移入」、ショカッサイは「帰化」で クレソンは「移入」としました。
 つまり「移入」の事実が確認できない種類については、「在来」でなければ「帰化」としてあるわけです。「湿地」の種類について見ると、全種 数のうちの 1/4が「帰化」「移入」で占められています。
 「帰化」の種類としてはキショウブやキシュウスズメノヒエ、アメリカセンダングサなどがあり、「移 入」にはクレソン、リュウキンカ、ショウブ、ニオイタデ、ツリフネソウ、ミクリ、ミソハギなどが含まれます。
 「移入」 の目的には、いわゆる観賞目的のものと、希少種の他所からの保護移植という2つ の面がありますが、いずれにしても「帰 化」「移入」の種類は多く、しかもクレソンのように湿地全体に広がっているも のもあり、湿地の植物全体を考える上で大きな要素となっています。
 「樹林」の種類について見ると「帰化」 「移入」の割合は低く、しかも「帰化」  はシュロ、「移入」はスギやヒノキ、ク マザサなどで、いずれも樹木とタケ・サ サ類です。つまり、樹林の植物、特に草 については人為的な影響はほとんどない わけです。
 「里地」の種類については「帰化」の 割合が高くなっています。これは、里地 にはもともと帰化植物が入りやすいとい う理由によるものです。
 人為的な影響の少ない樹林と、さまざ まに影響を受けている湿地−−長田谷津 の植物の種類構成は、両者で顕著に違っ  ていることが、調査の結果わかりました。


   湿地性の種 生育の由来   樹林性の種 生育の由来   里地性の種 生育の由来
 
    生育環境属性ごとの生育の由来の円グラフ


図3 生育環境属性ごとの、生育の由来の割合

 


 

街角自然たんぽう

 オオノマチ                                                     
 大野町・万葉植物園から大柏小

小道からの風景

  真夏の暑い日差しを避けながら、ゆっくり散策できる小道が、万葉植物園から大柏小学校にかけて700m位あります。
 小道への入り口は、万葉植物園の門から崖よりにあり、斜面の雑木林と万葉植物園の間に細い道があります。
 万葉植物園で植物をゆっくり観察した後にこの道を歩くと、シラカシやコナラ、クヌギなどの木々を斜面の雑木林で散策しながら、ミズヒキやクズ、ヤブガラシの花にくる昆虫も観察できます。

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博物館でこんないきもの飼ってます

カニやヤドカリの水槽

カニやヤドカリの水槽の写真

 放水路の干潟で捕まえた生き物を、まとめて入れてあります。
 昼間の時間は、ほとんどがカキ殻の間にいたり、伏せて砂の中に潜っていて、よく動いているのはヤドカリぐらいです。
 でもえさの時間になると、隠れ場所から一斉に出てきて、たちまちにぎやかな水槽に変わります。
 いろいろな大きさのカニやヤドカリが、結構対等にえさを取り合って戦いますが、いざという時、からに逃げ込めるヤドカリが、小さくても有利そうに見えます。

       

こんなふうに飼っています  

  
※ ※ ※準 備※ ※ ※  

・ 水  干潟の生き物は海水で飼うので、廃品の風呂桶に濾過器をセットし、人工海水の素 を溶した水を用意してます。使う時には少し薄めます。 
・ レイアウト  隠れ場所はたくさん作ります。カキの殻の塊を、カニといっしょに持って帰ってきて入れていますが、カキが死ぬと水が一気に悪くなるので要注意。


※ ※ ※餌※ ※ ※  

・ ヤドカリ……

 動物園の鳥の餌用冷凍ワカサギ、干潟で採ってきた貝を冷凍にしておいたものなど。
 解凍して皮や内臓などを取った剥き身にしてからやります。
 週に2回、量は少なめです。

・ カ  ニ …  種類によって餌が違います。ヤドカリと同じ餌を食べるケフサイソガニやマメコブシガニが飼いやすいです。


※ ※ ※
その他 ※ ※ ※

・ カニは夜中によく脱走します。
 エアーポンプのチューブなどを器用に登ってすき間から逃げ出します。
 ふたの穴はきっちりふさいで、重石もしています。それでも時折、朝、廊下の隅にいてびっくりします。

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くすのきのある通りから 小学校の子どもたちと

 このコーナーを読んで関心を持たれた小学校の先生から「3年生の総合学習で話をしてください」と電話がありました「鳴く虫」を飼育したり、里山の復元にかかわったりしていらっしゃる熱心な先生です。
 週に1クラスずつ、教室で15分話をし、それから校庭と街路樹で自然観察会をしました。
 街路樹のクスノキには、今年の卵からうまれたアオスジアゲハの幼虫が大小います。歩きながらも虫の話をしてくれる子に幼虫の見つけ方を教えると、隣の木でたちまち幼虫を見つけていました。
 石をどけて「なにがいるかなー」とこわごわ見ている子もいれば、ミミズを手に乗せて見せると「しんじられなーい」とでも言いたげに固まってしまう女の子もいます。
 アオスジアゲハの幼虫は、街路樹にはたくさんいますが、何故か校庭のクスノキにはいません。
 この疑問、誰か卒業までに解明してくれないかしら。    (M.Mさん)

 

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自然博物館の

博物館のめ


トンボ科  ナ ツ ア カ ネ

ナツアカネの写真

明るい林の写真
 棒の先などによくとまる。

 

 夏は明るい林のしげみなどに多い。

 

アキアカネとナツアカネの胸の比較写真 ナツアカネがよく見られる地域の図
 アキアカネ(上)とナツアカネ(下)
 胸の真ん中の黒条の形などがちがう。
 市の中部〜北部ではよく見られる。

 

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わたしの観察ノート 


◆大町公園より

  • ツリバナが咲いていました(5/4) 。噴水のある池のそばの斜面は、ツリバナの幼木が多いところで、年々、見られる花が多くなっていくかもしれません。
  • ウスバカゲロウが羽化をしていました(6/25) 。蟻地獄もウスバカゲロウの成虫もよく見られますが、羽化中のものを見たのは始めてでした。 2時間後には羽も伸びてふわりと飛び立ちました。
       金子謙一(自然博物館)

  • クサガメが繁殖シーズンに入ったようです(6/6)。あちらこちらでガサガサと動きまわっています。アカミミガメの動きも活発です。
  • カワセミの親子を見ました(6/13)。親鳥は魚を捕らえては、木陰に隠した子に運んでいました。
       宮橋美弥子(自然博物館)

  • ミドリシジミを見ました(6/6)。ハンノキの周辺のヨシに止まっていました。この日はミズイロオナガシジミも見ることができました。

       清野元之(自然博物館)

◆柏井雑木林周辺より

  • ゴマダラチョウを見ました(5/21)。クヌギの樹液を吸いにコクワガタやオオスズメバチもきていました。
           
           清野元之

里見公園周辺より

  • エゾムシクイが囀っていました(5/4) 。
  • アオバズクを見ました(6/1) 。17年連続の観察です。

  ◆堀之内貝塚周辺より

  • センダイムシクイ(5/10)、メボソムシクイが囀っていました(5/11)。
  ◆じゅん菜池公園より
  • キビタキが囀っていました(5/3) 。

      以上 根本貴久さん(菅野在住)

  • ミクリが咲いていました(6/17)。見た目が変わっていて目を引きます。
  ◆坂川旧河口周辺より
  • カジイチゴの実がいっぱいついていました(6/1) 。口に含むとやさしい甘味が広がりました。
  • ノカラマツの花が咲いていました(6/24)。いろいろな植物が繁茂する土手で他の種に負けまいと頑張っていました。

      以上 金子謙一
  ◆国府台江戸川河川敷周辺より
  • アオアシシギを見ました(5/4) 。鳴きながら下流へ飛んでいきました。
  • ホトトギスが囀っていました(5/51)。
  • ササゴイを見ました(6/14)。

      以上 根本貴久
◎ 肌寒い日が続き、6月10日に梅雨入りしました。

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