市川自然博物館だより    10・11月号

市立市川自然博物館 2003年10月1日発行

今年度の特集は、『長田谷津総合調査』の内容を紹介していきます。
 
第4回目は『長田谷津の水生生物』についてです。

新コーナー『自然博物館のめ』が始まりました。
 
生き物をいろいろなかくどから見ていきます。
 今回の生き物は
『ヤマトオサガニ』です。

     

 特集記事  街かど自然探訪  こんないきもの飼ってます
 くすのきのあるバス通りから  自然博物館のめ  わたしの観察ノート

 


長田谷津調査報告

特 集 
長田谷津の水生生物

 


 

長田谷津総合調査報告

 汚れた大柏川が途中にあるため、長田谷津は江戸川や東京湾とは生物のつながりがありません。
 長田谷津の水辺は「孤島」のような存在です。しかし、閉ざされた環境とはいっても変化がないわけではなく、特に水のあり様の移り変わりによって、繁栄する種類がいたり、逆に衰退する種類がいたりします。

    

水のあり様の3タイプ 

長田谷津の水源には湧水と、くみ上げの井戸水とがあります。井戸は最奥部の池に放流されているので、その池をのぞくと、大半の水辺は湧水によって環境が成り立っています。長田谷津の湧水は、窒素系の汚れが目立つものの生活排水の混入などはなく、きれいな水を好むとされるオニヤンマのやごやサワガニが生息できるほどには良好です。
 しかし、同じ湧水による水辺でも形態はさまざまで、大きくは次の3つのタイプに分類することができます。
@.湧水の流れ
   幅の狭い水路で、水深は数pと浅い。
A.中央水路
   幅広く、水深も@より深い。谷全体の水を集め、流量が多い。
B.たまり



図1 長田谷津の地点別水温(2001年)

図1 長田谷津の地点別水温(2001年)

       谷底を軽く掘り上げた浅い水辺で、おもに@の水が滞留する。

 これら3タイプの水辺は、水面の広がりや植物の繁茂の状態など多くの面で異なっていますが、年間の水温変動の点でも大きな違いがあります(図1)。
 「湧水の流れ」は、年間の水温変動幅が6℃程度で、夏でも20℃に達することはなく、冬でも10℃を下回りません。
 一方「たまり」は、その大きさや湧水の流入量によって水温変動の形は多様で、湧水が多ければ、水温の変動も「湧水の流れ」と同様のパターンになりますが、そうでない場所では、夏の水温が35℃を超えたり、逆に冬の水温が下がって、水面に氷が張るような場所もあります。

 

湧水の流れを好むオニヤンマ

  カワニナ、サワガニ、オニヤンマ(やご)、スナヤツメなどは、長田谷津の中でもおもに「湧水の流れ」を中心に生息 します。
   オニヤンマなどは「湧水の流れ」から続く中央水路でも見ることができます。これらの種類が「湧水の流れ」を好むのは必ずしも水温の点だけではありません。
  オニヤンマやスナヤツメは水底が砂であることが重要ですし、サワガニには流路から連続して斜面林へ行けることが大切です。
  カワニナには水温や水質が重要であるほか、斜面林から流路に舞い落ちる落ち葉が、餌や隠れ家にもなっています。
 現在の長田谷津では、サワガニやオニヤンマ、カワニナは数多く見られますが、スナヤツメは少なく、好適な場所が少ないことが推察されます。

図2 オニヤンマ(やご)の確認地点
図2オニヤンマ(やご)の確認地点


中央水路に多いヨコエビ類

 「中央水路」を特に好む水生生物というのは、あまりありません。
 植物の場合、藻類のアオカワモヅクが長田谷津では中央水路だけに生育していますが、水生生物ではそのような例はなく、図3に示したヨコエビ類なども中央水路で多く見られるのは事実ですが、「たまり」でも場所によっては見ることができます。
 また「たまり」に多いドジョウなどが、逆に中央水路で見られることもあります。
 むしろ「中央水路」のもつ意義は、生物の上下流や左右岸の相互移動を実現する経路としての機能かもしれません。
 飛んだり、湿地を歩いたりできない水生生物にとっては、途切れることなくつながる水路だけが唯一の移動経路なのです。

図3 ヨコエビ類の確認地点
図3 ヨコエビ類の確認地点


たまりに多い帰化生物

 夏場の高水温に対応できる水生生物は多くはないようです。
  谷奥の、ある「たまり」を調べたところ水温が29.9℃もあり、確認できたのはカダヤシ、アメリカザリガニ、ウシガエルのおたまじゃくしミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)の4種類でした。
  いずれも、帰化生物です。ところが、この「たまり」では一部で流入する湧水が水中で流れを作り、そこは水温17.8℃でホトケドジョウを確認することができました。
  ホトケドジョウは在来種で長田谷津には多く生息していますが、夏場の「たまり」では湧水や木陰などに寄っている例が多いようです。
 現在の長田谷津では、むやみに「たまり」を作ると、結果として特定の帰化生物ばかりを増やすことになりそうです。

図4 カダヤシの確認地点の図
図4 カダヤシの確認地点


全域で多いアメリカザリガニ 

 水辺のタイプにかかわらず、長田谷津のあらゆる水辺に生息しているのがアメリカザリガニです。
  旺盛な繁殖力と劣悪環境にも耐える適応力のおかげで、どこにでも住み着いています。
 しかし、水辺の環境を考える上ではありがたい生物ではありません。
  水草を食べて、根絶やしにしてしまうからです。水生生物の多くは、産卵場所や隠れ家、餌として水草に頼って暮らしています。
  ですから、爆発的に増えたアメリカザリガニによって水草群落が破壊されると、結果的に様々な水生生物が姿を消してしまいます。
  水草群落の欠如は、現在の長田谷津を巡る最大の課題となっています。

図5 アメリカザリガニの確認地点
図5 アメリカザリガニの確認地点

 


 

街角自然たんぽう

             オオ         マチ                                                     
 大  町 ・ 梨 街 道

大町梨街道の看板の写真

  大町周辺には梨畑が多く残っていて、8月が近づくと、あちらこちらの農家で梨を売り始めます。
   特に国道464号線沿いには大町の梨農家が集まっており、大町梨街道と呼ばれています。
 梨の種類は、時期によって変わり、8月始めから幸水、豊水、新高の順番で店先にならびます。
  秋の実の季節も良いですが、春先、桜が咲いて1週間ほどすると梨の花が咲き始め、畑一面に梨の花が咲いた光景はとてもきれいです。

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博物館でこんないきもの飼ってます

アカハライモリ

アカハライモリの水槽の写真

 雄と雌を1匹ずつ飼っています。
  ガラス面に向かって立ち上がったり(もちろん水中ですが)、こちらの方をじっと見ていたり(何も考えてはいなさそうですが)と、結構ひょうきんなしぐさで楽しませてくれます。
 たまに生き餌(小魚やおたまじゃくしなど)を入れてやると、急に動きが精悍になって、獲物をすばやく捕まえます。
   ふだんの、かなりスローな暮らしぶりからは想像できない変わり様です。

       

こんなふうに飼っています  

  
※ ※ ※ レイアウト ※ ※ ※  

・ 陸 地  ほとんど水中にいますが、時折こうら干し(?)をしています。
 レンガを横倒しにし、その上にコケを敷いてあります。
  買ってきたばかりのレンガはあくがあるので、しばらく雨ざらしにしておいたものなどを使っています。
 段差があっても登れます。
・ 濾過器……  スポンジのフィルターがエアーポンプに直結した、簡単なものを入れてあります。スポンジの陰が、隠れ場所にもなっていて昼間の定位置です。
・ 水 …………  週に数度、3分の1ぐらいづつ替えています。汲み置きをしておいた水です。


※ ※ ※ 餌 ※ ※ ※  

 手に入った時は生き餌、それ以外は動物園の鳥の餌用冷凍ワカサギの剥き身をやっています。
 食べ方は不器用なので、丸呑みしやすいように細長くちぎっています。
 始めの頃は、ピンセットでつまんで、鼻先で振ったりしましたが、近頃は慣れ て顔に近づけるだけで食べています。
 週に2回、気が向かないと食べない時もあります。

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くすのきのある通りから プールで虫さがし

  季節感のない、夏と秋ですね。「残暑だー。夏みたい」となってから、我が家のヘチマがやっと実を結びました。
   「4年生が育てる植物・オクラとゴーヤ」もいつのまにかヘチマの葉の陰で実っていました。
 小学生の娘と、その友達を連れて、市民プールへ泳ぎに行きました。
  幼児用の浅いプールに面白半分で入って這っていたところ、泳いでいる虫を発見。
  2人を誘い、虫探しをしました。5mmぐらいで足をオールのようにかいて、すばやく泳ぎ回り、水底でじっとしています。
  4、5匹は見つけました。塩素で死なないのでしょうかね。他の深いプールには、いませんでした。
  マツモムシの仲間でしょうか。小さい頃、コップに水と小さく切った紙を入れ、紙が沈むと虫が取りに行ったりしました。
  そのとき「風船虫だよ」と教わりましたが、そんな名前もあるのかしら。    (M.Mさん)

 

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自然博物館の

博物館のめ


スナガニ科  ヤマトオサガニ

ヤマトオサガニの写真

泥の干潟の写真
 干潟のカニとしては大きく目立つ。

 

 泥の干潟を好む。

 

オサガニとヤマトオサガニの額の比較写真 ヤマトオサガニがよく見られる地域の図
  オサガニ(上)
   よく似たオサガニには額に突出部がある
  ヤマトオサガニ(下)
 江戸川放水路と行徳近郊緑地に生息。

 

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わたしの観察ノート 


◆大町公園より

  • ニイニイゼミが鳴いていました(7/3) 。アブラゼミが鳴き出すまでは、ニイニイゼミの声もよく聞き取れます。

             宮橋美弥子(自然博物館)

  • オニヤンマが続々と羽化していました(7/10)。雨がちで湿度が高いせいか、お昼近くになっても飛ばずにとまっていました。

  • キイトトンボを見ました(8/3)。谷奥の池に導入したオオフサモの群落に多数いて産卵をしていました。

      以上 金子謙一(自然博物館)

  • ヘイケボタルを見ました(7/10)。このところ気温が低いせいか、まだひかり始めです。

             小川 晃(自然博物館)

◆市営霊園周辺より

  • オオバノトンボソウが咲いていました(7/3)。今年の株は花付きがいいようでした。

  • ツリガネニンジン、サワヒヨドリ、アキカラマツが咲いていました(8/1)。

南大野周辺より

  • クマゼミの鳴声を聞きました(8/23)。南大野のマンション群と対岸の農家の屋敷林から聞こえてきました。

  ◆堀之内貝塚周辺より

  • キツネノカミソリが咲いていました(7/20)。満開になるのは月末でしょう。

     以上 金子謙一

  • フクロウを見ました(7/6)。中央部分のクヌギの木にとまっていました。
  ◆北国分周辺より
  • ツミを見ました(7/5) 。イヌシデの木に雄雌並んでとまっていました。

     以上 根本貴久さん(菅野在住)

  • ミンミンゼミの鳴声を聴きました(7/ 25)。今年初めての鳴声でした。

          谷口浩之さん(北国分在住)
  ◆坂川旧河口周辺より
  • フジバカマが咲きだしました(8/22) 。センニンソウも満開でいよいよ秋の花の季節が始まりました。

  • サクラタデが咲いていました(8/31)。2年連続の開花です。

     以上 金子謙一
  ◆国府台周辺より
  • アオバズクを2羽見ました(7/12) 。すでにヒナは孵化しているようです。
  ◆国府台江戸川河川敷周辺より
  • ホオアカがさえずっていました(8/16)。

     以上 根本貴久さん
◎ 8月2日にようやく梅雨が明けましたが、暑さは続かず冷夏でした。

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