自然博物館だより 6、7月号

市立市川自然博物館 2004年6月1日発行

     

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 くすのきのあるバス通りから  自然博物館のめ  わたしの観察ノート

 


 

特 集
 絶滅危惧種の蛾  

 


 

  「蛾」といえば、人間の生活にとって非常に有害な生物のひとつであり、いつも駆除の対象となっています。
 しかし、そんな「蛾」のなかにも人間の都合による生息環境の改変などによりその姿を私たちの知らない間にひっそりと消してしまうものも少なくありません。
 今回は、そのような「絶滅危惧種の蛾」を取り上げます。

    

絶滅危惧種の蛾とは
 現在、地球全体で絶滅が危惧されている生物を保護しようという動きが各地で行われており、日本でも「天然記念物」に指定し、種類や生息地域全体を保護しているところも少なくありません。
 そのなかにあって「蛾」となると「種の天然記念物」にもなっておらず、むしろ人間の生活にとって有害であり、駆除の対象にもなっています。
 しかし、そのような生物である蛾のなかにも他の生物と同じように環境の改変によって将来的にその姿を消してしまう恐れがある種類も存在することがわかってきました。
 そこで近年、国および都道府県レベルなどで絶滅危惧種をまとめた「レッドデータブック」が発行され、そのなかにも他の生物と同様に蛾も取り上げられるようになりました。これに掲載された蛾の選定基準は、次の理由によるものです。

 @生息する環境が特殊なもの。

 A全国的に生息個体数が少ないもの。

 Bその地域だけに固有なもの。

 C数10年間、記録されていないもの。

 

 

 

 

国選定の蛾は少数

 1991年に環境省(その当時は環境庁)より発行された「レッドデータブック(無脊椎動物編)」によれば、絶滅危惧種として同じ鱗翅目の「蝶」は60余種が選定されているのに比べ、「蛾」となるとわずか10余種しか選ばれませんでした。
 日本国内で、 6,000種とも7,000種と もいわれている「蛾」ですが、これが発行された頃は、まだ国内各地のレッドデータブックが何も発行されていないこと国内での分布や生態などの調査が蝶に比べて遅れていること、などによりこのような少数になったものと思われます。
 しかし、「蝶」とちがって国指定の「天然記念物」が1種類もいない「蛾」という生物が、初めて「絶滅の恐れがある生物」として位置づけられ、その結果「蛾」という生物に対する一般的な認識を少しだけ変化させるきっかけにもなりました。
 そして、これ以降は各地の「レッド データブック」にもだんだんと絶滅危惧種としての蛾が選定され始めました。

 

 

 

千葉県の絶滅危惧種の蛾

  千葉県では、県内での絶滅危惧種を5つの領域に分けて、それぞれの領域に入るべき種類を各専門分野の研究者が選定した「千葉県レッドデータブック(動物編)」が2000年に発行されました。
 それによれば、そのすべての領域に蛾が入っており、全領域併せて20種が絶滅危惧種として指定されました。
 このレッドデータブックに記載された絶滅基準の各領域、その領域を表す記号およびそのなかの各領域に掲載された千葉県で絶滅危惧種として選定された蛾は、次の通りです。


 X:絶滅・不明生物(2種)  マエアカヒトリ、ウスズミケンモン

 A:最重要保護生物(2種) オビグロスズメ、カバイロシャチホコ

 B:重要保護生物(4種)   カバイロキヨトウ、ツマグロキヨトウ、オオチャバネヨトウ、
                  ガマヨトウ

 C:要保護生物(4種)    ホソバオビキリガ、サヌキキリガ、ウスミミモンキリガ、
                  ミスジキリガ

 D:一般保護生物(8種)   マガリキドクガ、ナチキシタドクガ、ヤクシマドクガ、
                  ハマオモトヨトウ、カギモンキリガ、コシロシタバ、
                  オニベニシタバ、ジョナスキシタバ


 これらの種類は、選定されたものにより異なっていますが、次のような基準理由によって千葉県での絶滅危惧種として選定されたようです。

  @昔、県内で普通に確認されていたが、現在は環境の改変などによりまったくその姿が見られないもの。
  A「湿地」や「雑木林」といった県内でもとくに環境が改変される恐れのある場を生活の場としているもの。
  B千葉県での分布がその種類にとって非常に学術的な価値があるもの。
  C県内で現在まで確認された個体数が極めて少ないもの。       
  D県内での分布が限定されているもの。

 このレッドデータブックに掲載された「蛾」の種数は、国レベルと同様に千葉県全体の蛾の種数と比べ、やはり少数ですが、国レベルで扱われた種数よりは多く、このレッドデータブックにより千葉県にも絶滅危惧種の蛾がいることが認識されたものと思われます。
 また、前述したように千葉県では20種が絶滅危惧として選定されていますが、千葉県に隣接する都県ではどうなっているのかというと、
 ・埼玉県:25種、茨城県:16種。となっており、千葉県の種数とそれほど変わらないものになっています。なお、神奈川県は現在のところレッドデータブックが発行されておらず、東京都も発行はされているものの、「蛾」については1種類も選定されていませんでした。
             

 

市川市での絶滅危惧種の蛾
 最近、市川市では動植物の各分野の専門家が調査担当者になって「市川市自然環境実態調査」が実施されました。
 その調査報告書の中で、各調査担当者が市内の絶滅危惧種を選んで掲載しています。 
 藤平(2004)においては、掲載された蛾の種数は21種と県とほぼ同数ですが、種類は大半が市川市独自で選定されたものになっています。なお、絶滅危惧種の領域、選定理由などは県に準じて行われています。
 選定された種類には、市川市での記録が千葉県で最初の生息記録となった「イチモジヒメヨトウ」も含まれています。

 X:絶滅・不明生物(1種)   マエアカヒトリ

 A:最重要保護生物(2種)  ミスジキリガ、ガマヨトウ

 B:重要保護生物(4種)   ホウジャク、ヒトリガ、ウスミミモンキリガ、 コシロシタバ

 C:要保護生物(6種)     クロフキオオメイガ、イチモジヒメヨトウ、ハガタウスキヨトウ、
                   キスジウスキヨトウ、クシヒゲウスキヨトウ、ギンモンアカヨトウ

 D:一般保護生物(8種)   ハイイロボクトウ、チャバネツトガ、クロバネフユシャク、
                  ホシカレハ、カレハガ、イボタガ、シンジュサン、エゾヨツメ

引用文献   藤平 暁(2004) 市川市の保護上重要な野生生物−チョウ目ガ類−案.
         市川市自然環境実態調査報告書2003:946〜950,市川市自然環境調査会

 イチモジヒメヨトウの標本写真

  △イチモジヒメヨトウ  県内初記録の市川市では、要保護生物に指定されています。

 

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街角自然たんぽう

 おにたか                                                       
 鬼高・コルトンプラザの緑の広場


コルトンプラザ 緑の広場の写真

 コルトンプラザ内の、緑の広場をご存知ですか?テニスガーデンの隣にあって、混雑している時などチョット息抜きができる場所です。
 花壇を見ると、バラやハーブに混じって、藍染めに使うタデアイやベニバナ、綿をとるワタや和紙に使うコウゾなど、変わった植物も見ることができます。
 奥に進むと、スダジイの大木やサクラなどの木々が茂り、スズメやムクドリを見ることができます。
 また、秋になったらドングリ拾いも楽しめます。

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博物館でこんないきもの飼ってます

 カ ダ ヤ シ

水草          隠れ場所
カダヤシの飼育水槽の写真
カダヤシ

 カダヤシは「蚊を絶やす」という意味の名前を持った、メダカによく似た魚です。
 水面に浮かんだボウフラを食べやすいように、口は少し上向きです。
 飼育を始めた頃は、すぐに沈んでしまうようなエサは、途中の水草に引っかかるように入れていました。そうしないと、食べづらいと思ったからです。
 でも、水底に沈んだ餌も、チュルンと吸い込んで上手に食べています。人間が考える過保護は、不要なのですね。

       

こんなふうに飼っています  

  
※ ※ ※ レイアウト ※ ※ ※  

・ 水 ……  水槽の半分ぐらい入れています。水深は浅くても大丈夫です。
 飛び出すことはあまりありませんが、蓋はしておきます。
・ 濾過器 …  投げ込み式の簡単なもので十分です。匹数が少なければ、水はそれほど汚れないので、水替えは週に1度、3分の1ぐらい換えます。
・ その他 …  水面近くを泳ぐので、水草や隠れ場所はそれほど必要ありません。
 水槽の見た目がきれいなぐらい入れてやります。
 水温の変化や30度以上の高温にも比較的強いですが、直射日光は避けた方が良いです。


※ ※ ※ 餌 ※ ※ ※  

・ 肉食が強いので、冷凍のアカムシを解凍したものが好きです。
・ その他には、金魚の餌、乾燥オキアミの粉など、何でも食べます。口が小さいので、細かく砕 いてからやります。 

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くすのきのあるバス通りから

  4月12日の朝、一緒に登校指導(緑のおばさん)をしていた人が、「ねえ、このバッタずっと動かないのよ。それに、子供たち、だれも気が付かないのよ。」と。
 見ると、ブロック塀にクビキリギスがいました。数日後、小学校は全校で、競馬場へ歩き遠足でした。娘は「内馬場へ行く通路でクビキリギスを見つけた。」と言っていました。草木の上の方がいいと思うけど、何しているのかな。
 大柏川と真間川の合流する、浅間橋のあたりを通った時、川を覗いてみました。
 音を立てて水が引いていました。狭い真間川の所は渦ができ、細かいゴミがクルクル回っていました。春の干満の差が大きいせいでしょうか、いつもより矢板が多く見えます。
 ヘドロがかき回され、吐きそうな臭いがします。もう少し下流の大和橋のあたりもカーブしているせいか臭いです。私たちが出す水を引き受けて、川や海が汚れてしまうのは、悲しいです。汚れた水や合成洗剤は流さないようにしましょう。 (M.M. )

 

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自然博物館の

博物館のめ


ハゼ科  ト ビ ハ ゼ

トビハゼの生態写真

繁殖期のトビハゼ
 飛び出た眼、腕のような胸ビレが特徴。 繁殖期の6月は、干潟でよく見られる。
トビハゼの巣穴 トビハゼの分布図
 繁殖用の巣穴。大小2つの入り口。
 市内での生息地は、2ヶ所しかない。

 

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わたしの観察ノート 


◆大町公園より

  • フキの花が咲いていました(3/7)。 いつも開花前に持ち去られてしまうのですが、「取らないで」の看板を設置したからでしょうか? 無事、春の花束のような花を、いくつも見ることができました。
  • アズマヒキガエルが産卵していました(3/15)。事前の気配は感じられませんでしたが、12日の小雨をきっかけに産卵したと思われます。
  • チゴユリが咲いていました(4/19)。ホウチャクソウやアマドコロはよく目にしますが、ふと気付くとチゴユリの可愛らしい花が足元で咲いていました。 

       金子謙一(自然博物館)

  • オオハクチョウが上空を大声で鳴きながら飛んでいくのを見ました(3/19)。

       小川 晃(自然博物館)

  • オオアラセイトウの花に、アカタテハが来ていました(3/14)。
  • 成熟したホソミオツネントンボを見ました(3/27)。
  • ツマキチョウを見ました(4/7)。この時期しか見られない蝶です。
  • キアゲハを見ました(4/9)。羽化後、間もないようでした。

       土居幸雄さん(大町在住)

市川霊園周辺より

  • 正門近くの土手に、タチツボスミレが咲いていました(3/7)。

       藤田柳子さん(東大和田在住)
  • 東側斜面でジュウニヒトエが咲いてい ました(4/20)。

◆柏井雑木林周辺より

  • キランソウが咲いていました(4/20)。

       以上 吉田毅さん(柏井町在住)

堀之内貝塚周辺より

  • ホタルカズラの花が咲いていました(4/11)。スッキリとした青紫色の花でした。

      介川武夫さん(曽谷在住)

  ◆小塚山公園より

  • オオタカを見ました(3/21)。
  • ムラサキシジミを見ました(4/3)。
  • ツミを見ました(4/18)。カシの木に止まっていました。

  ◆じゅん菜池公園より

  • アオオサムシを見ました(3/7)。

     以上 道下誠さん(中国分在住)
  ◆江戸川放水路周辺より
  • トビハゼを見ました(4/10)。暖かい干潟には、チゴガニやヤマトオサガニなどのおもなメンバーが揃っていました。

        金子謙一
◎ 3月は順調に春が進みましたが、4月には真夏日もありました。

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