自然博物館だより 12・1月号

市立市川自然博物館 2004年12月1日発行

     

 特集記事  街かど自然探訪  こんないきもの飼ってます
 くすのきのあるバス通りから  自然博物館のめ  わたしの観察ノート

 


 

特 集
 市川の成虫越冬する蝶  

 


 

 「蝶」は、他の昆虫たちと同じように春〜秋にかけて最も多くの種類が「成虫」の姿で過ごします。
 そして、冬の寒い時期は、そのほとんどが「成虫」以外の姿で乗り切っています。
 しかし、「蝶」のなかには「成虫」で冬を過ごす種類も存在し、市川にも生息しているものがあります。
 今回は、その「市川の成虫越冬する蝶」を取り上げます。

    

市内、周辺で越冬する種類が多い

 現在、北海道〜沖縄まで日本国内では約270種の蝶が確認されています。そして、単発的に目撃された種類を含め、今までそのなかの74種が市川市から記録があります(木村2004)。
 市川市から記録された蝶は、大半が冬の時期を「ミドリシジミ」のように「卵」で過ごすもの、「ヤマトシジミ」のように「幼虫」で過ごすもの、「モンシロチョウ」のように「サナギ」で過ごすもの、など「成虫」以外の姿で送っています。
 そのようななかにあって、「成虫」の姿のままで厳しい寒さを乗り切っている「成虫越冬型」の種類があります。
 市内の「成虫越冬型」の蝶は、「クジャクチョウ」など単発的な個体の目撃だけによる記録があるものも含まれますが、大半の種類は、毎年、市内およびその周辺地域にある、越冬に最適な場所で成虫越冬を行っています。
 そして、真冬でも暖かい日には、飛んでいる姿、あるいは咲いている花で吸蜜する姿が見られることもあります。

 

 

 

 

成虫越冬の蝶は15種が確認

 研究者により意見が異なりますが、「成虫越冬型」が含まれるグループ(=科)は以下の3グループだけで、市川市から確認されたのは、単発的な記録のものも含めて15種です。

1)シロチョウ科(2種) 
 ・キチョウ   ・ツマグロキチョウ

2)シジミチョウ科(3種)
 ・ムラサキシジミ  ・ムラサキツバメ  ・ウラギンシジミ

3)タテハチョウ科(10種)  
 ・テングチョウ  ・アカタテハ  ・ヒメアカタテハ  ・クジャクチョウ  ・ヒオドシチョウ
 ・キタテハ   ・シータテハ  ・ルリタテハ  ・ウスイロコノマチョウ  ・クロコノマチョウ

 

 

 

 

 

最近、確認された種類

 成虫で越冬する蝶のなかには、最近になって市川市でその分布が確認された種類もあります。
 それが「ムラサキツバメ」です。ムラサキツバメは、翅に紫色の鱗粉で覆われた部分があり、後翅に鳥のツバメの尾翼によく似た尾状突起があることからその名前が付けられました。
 この蝶は、市内にも生息し、やはり成虫越冬をするムラサキシジミにとても近い種類です。この蝶の本来の生息分布は、近畿地方以西の本州、四国、九州、南西諸島であり、市川市を含む関東地方ではほとんど単発的な記録しかありませんでした。
 ところが、最近の温暖化による気候の変化、食樹および越冬場所であるマテバシイの公園などへの植栽などが要因で、関東地方や一部の甲信越地方にまでその分布地域が拡大されました(岩野2002)。
 千葉県では、館山市で1984年に確認(福島1984)されたのが最初でしたが、このときは単発的な個体による記録だっだので、まだこの個体が本当に千葉県内で発生したものなのかどうかもわかりませんでした。
 その後、2000年〜2001年にかけて、この蝶の確認の記録が県内各地で相次いで行われたことから、千葉県でも確実に発生していることがわかりました(佐藤・井上2001;2003)。
 市川市では、2000年に国府台で確認(佐藤2001)されたのが市内での最初の記録になりました。このときは、幼虫の脱皮殻が発見され、越冬成虫が存在している可能性がある、といわれていました。
 そして、2002年には堀之内、姥山貝塚公園など北部、南八幡、東大和田など中部、そして行徳駅前、末広など南部、といった市内各所で卵や幼虫などが確認され、南大野や国府台では、地表に落下したマテバシイの落ち葉からサナギも見つかりました(木村2003;2004)。
 しかし、確実な成虫の越冬の姿は、現在のところまだ1個体も確認されておらず、なぜ市内で越冬できないのか、その理由もよくわかっていません。

シジミチョウ科ムラサキシジミの写真

 シジミチョウ科ムラサキツバメ 

 

 

 

 

越冬状態を見つけられる種類

 成虫越冬の蝶たちは、そのほとんどが常緑樹の葉の裏側や、枯れた樹木の穴のなか、雑木林あるいは河川敷に堆積した落ち葉や枯れ草の間などで、翅の裏側を表にし、翅を閉じた姿で過ごしています。 翅の裏側は、大半の種類が身を守るために越冬場所の回りに似せた地味な色(=保護色)になっていて、私たちが越冬場所でその姿を探そうと思っても、見つけることはなかなか困難です。
 しかし、個体数は少ないのですが、よく注意すれば越冬している姿が、簡単に見つけられる種類もあります。それが「ウラギンシジミ」です。
 ウラギンシジミは、翅の表側はオスとメスで異なっており、オスは橙赤色、メスは青白色ですが、裏側はウラギンの名の通り、オス、メスとも銀白色で、成虫越冬する蝶としては、保護色になっていません。そのため、常緑広葉樹や針葉樹の葉の裏側を注意深く探すと、越冬しているこの蝶の姿を簡単に見つけることができます。
 大町自然観察園でも、年により若干の差はありますが、毎年12月上旬から2月下旬くらいまで、シラカシなどの常緑広葉樹の葉の裏側で越冬している姿を観察路側からでも見つけられます。
 そして、他の成虫越冬する蝶たちと同じように、3月になって暖かくなると活動を開始し、食草であるマメ科のクズなどに産卵をしてその一生を終えます。

 

 

 

参考、引用文献

 福島 努(1984)  
 「千葉県館山市でムラサキツバメを採集」 月刊むし(166):45,むし社. 

 岩野秀俊(2002)
 「神奈川県におけるムラサキツバメの2001年の記録」 神奈川虫報(140):61-69,神奈川昆虫談話会.
 
 木村 巧(2003) 
 「市川のチョウ類U」 市川市自然環境実態調査報告書2003:405-423,市川市自然環境調査会. 

 木村 巧(2004) 
 「市川のチョウ類V」 市川市自然環境実態調査報告書2004:567-588,市川市自然環境調査会. 

 佐藤隆士(2001)
 「2000年秋千葉県内でのムラサキツバメの発生調査」 房総の昆虫(26):2,千葉県昆虫談話会 

 佐藤隆士・井上大成(2001)
 「2000年から2001年にかけての千葉県内のムラサキツバメの生息状況に関する調査結果の追記」 
 房総の昆虫(26):3-5,千葉県昆虫談話会

 佐藤隆士・井上大成(2003)
 「千葉県内におけるムラキツバメの生息状況に関する調査2」房総の昆虫(29):3-5,千葉県昆虫談話会  

 

 

 

 

 

 

 

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街角自然たんぽう

かとうしんでん
加藤新田・中江川水門
中江川水門周辺の写真

 加藤新田の一帯は、大正時代までは行徳塩田として、東京湾の海水を利用して塩作りをしていました。
 現在では埋め立てが進み、多くの工場からなる工業地帯になっています。
 中江川水門の周辺は、内湾のようになっていて、船付き場がいくつもあります。
 堤防は歩きやすい歩道になっているので、護岸越しのぞくと、チチュウカイミドリガニやボラの稚魚などが観察できます。
 冬には、カモ類などの野鳥も見れます。

 

 

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博物館でこんないきもの飼ってます

 テナガエビ科  テナガエビ

テナガエビの写真

 料理の食材に使われるので、わりと姿形と名前が一致している方が多いようです。
 逆に、そのための混乱も起きています。
 大きなはさみに長い腕を持つのはオスだけで、メスは腕が細短く、迫力のある手長にはなりません。
 現在飼育しているのはメスの方なので、唐揚で見る姿ではないようです。
 時折、水槽の前で「これはテナガエビじゃない!」と力説している方を見かけると、名札の説明も読んでね、と思ってしまいます...。

       

こんなふうに飼っています  

  
※ ※ ※ レイアウト ※ ※ ※  

・ 水 ……  深さは水槽の半分ぐらいです。
 あまり汚れないので、水替えは定期的ではなく、様子を見ながら、おこなっています。
・ ふ た …  けっこう跳ねて飛び出してしまうので、水深は浅くても、ふたはしています。
・ ろ過器 …  フィルターとエアーが一体になったものを入れてあります。
・ 陸 地 …  必要ありません。でも、レンガで陸地を造って、2才の仔イモリを同じ水槽内で飼っています。


※ ※ ※ 餌 ※ ※ ※  

  •  冷凍アカムシを解凍したものをやっています。

  •  週に2回、残さない量を見ながらやります。

  •  ばら撒いてやると、水面まで上がってきます。

  •  底に落ちた餌も、はさみで 上手に拾います。

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くすのきのある通りから 今回の観察は、庭に来たヒキガエル。

 草ぼうぼうだった空き地に、ここ数年で4件の家が建ちました。
 以前シマヘビを見た場所です。
 でも、しばらくすると前に生えていた草花がひょっこりでてきたり、逆に見知らぬ草が生えてきたりしました。
 カナヘビやヤモリを見かけると「住み着いてね」と思います。
 先日は、太ったカエルが草の陰にいました。隣の古い家からやってきたようです。
 そのうち、空き地の時見たシマヘビが帰ってくるかも。           (M.M. )

ヒキガエルの写真

 

 

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自然博物館の

博物館のめ


ウコギ科  ヤ ツ デ

ヤツデの全体写真

ヤツデの花のアップ写真
 秋から冬に花を咲かせる。 丸く盛り上がった部分に蜜の結晶がある。
キヅタの花のアップ写真 ヤツデの市内分布図
同じ仲間のキヅタもそっくりの花。  庭にもあり、林の中でも見られる。

 

 

 

 

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わたしの観察ノート 


◆大町公園より

  • カノツメソウが咲いていました(9/5) 。夏の林内に咲くセリ科の野草です。
  • ミツバアケビの実がたわわについていました(10/10)。
  • アオジを見ました(10/25)。野鳥たちの数と種類がグッと増え、いよいよ季節は冬に向かっています。

    以上 金子謙一(自然博物館)
  • カケスを見ました(10/1)。ドングリの季節になるとやってきます。
  • エゾビタキを見ましたました(10/2)。胸の斑点模様と羽の白線が確認できました。

姥山貝塚より

  • マテバシイ、コナラ、クヌギのドングリがたくさん落ちていました(10/1)。

    以上 宮橋美弥子(自然博物館) 

柏井1丁目周辺より

  • クズの花とウワミズザクラの実の共演を見ました(9/8)。見事なコントラストに感激しました。

        吉田 毅さん(柏井町在住) 

◆大柏川より

  • カダヤシがリハビリパーク付近の岸沿いに行けども行けども群れて泳いでいました(10/7)。

        金子謙一

里見公園周辺より 

  • サシバが上空を低く旋回していました(9/12)。
  • エゾビタキを見ました(9/25)。ヒマラヤスギのてっぺんにじっととまっていました。

小塚山周辺より 

  • サンコウチョウを見ました(9/12)。

  ◆じゅん菜池緑地周辺より

  • ハシビロガモを初認しました(9/19)。

    以上 根本貴久さん(菅野在住)

  ◆北国分周辺より

  • マヤランが咲いていました(9/11)。

        瀧野英一さん(北国分在住)

  ◆坂川河口周辺より

  • フジバカマが咲いていました(9/11)。センニンソウなども一緒に咲いていました。
  • ワレモコウが咲いていました(9/19)。今年の江戸川土手は、野草がきれいでヨメナの花が群生していました。

  ◆江戸川方水路より

  • ハナオコゼを地元の漁師さんが捕まえました(9/13)。今は、博物館で展示しています。

    以上  金子謙一
◎ 10月は台風が毎週のように本州に近づいて大雨を降らせました。

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